ヒトコトLAトーキング #70 ハヌカ in LA

12月に入りロサンジェルスはクリスマスのライトで鮮やかです。今週から一般の家などがさらに装飾が綺麗になってきています。クリスマスはキリスト教徒にはめでたい日なのでそれまではそわそわしていればいいのですが、クリスマス前にも大きなお祝い事があります。ハヌカ(Hanukkah)と呼ばれるものですがユダヤ教のお祝いです。 
毎年この時期によく聞くハヌカはクリスマスほど有名ではなくユダヤ教でなければ多分縁のない行事のようですがかなり古い歴史がありその発端は紀元前175年まで遡ります。当時のエルサレム、ジュディア(Judea)と呼ばれていた地域はアンティオコス王に統治されていました。彼はその街の住人に対して彼らの崇拝する宗教 (ユダヤ教)を禁止する法律を勝手に作り、その代わりにギリシャの神々を信仰するように仕向けました。アンティオコス王は兵を使いユダヤ教の大切にしている寺院を破壊しユダヤ教のシンボルをギリシャの神ゼウスのものに取り替えたのでした。それから長い間反略していたユダヤ教徒は紀元前164年、ある信者マカビー(Maccabee) と呼ばれる人物を中心に集まった反発勢力がアンティオコス王の軍勢を退け、ついにジュディアを奪還。一件落着となりました。 戦いの後の、マカビーが取り戻したある寺院内に入ると、暗闇の中から見つかったのはほんの少し油の入った瓶だけがとり残されていたそうで、その油の量は寺院の中を灯す蝋燭一晩の量しかありませんでした。しかしその油は奇跡的にも8日間も灯され、マカビーとその仲間達は8日間灯りが保ったお陰で十分にあたりにあった油を見つけることができ、これはまさにマカビーを祝福する神の御加護だとこの話はユダヤ教のテキストに加えられました。 この戦い後もアンティオコス王の継ぐ勢力はさらなる奪還を仕掛けてきて争いは続くのですが紀元後142年、ついに当事者同士が平和条約を結びユダヤ教は彼らの自分の領土を手にすることがきでました。めでたしめでたしということでこのマカビーの功績を未来永劫残すためハヌカはユダヤ教徒にとって大事なセレブレーションとなりました。ハヌカとは “dedication”=献身という意味でこれはマカビーの貢献という意味になります。 彼らの使うヘブライカレンダーは太陰暦を使っているためアメリカや日本の太陽暦の暦とズレます。このハヌカも毎年日にちは変わります。今年は12月7日から14日までの間、歴史上のマカビの油が続いた8日間、ユダヤ教コミュニティーでは様々なイベントが催されます。 ちなみに一般家庭ではMenorah for Eight Nights という行事が一般のようです。ユダヤ教徒ならどの家庭でも多分見られるはずのメノラと呼ばれる蝋燭立てがあります。9個の蝋燭が横に一列立てられるようになっているものでハヌカの1日目から毎日に一つずつ蝋燭をともしていきます。8日なので8個のはずなのですが真ん中に“shamash” シャマシと呼ばれる1番大きな蝋燭が立てれらていてこれは最初に灯され残り8個の灯りの道標、または “servant” サーバント、他のあかりを灯すためのサポートという役割になりシャマシの灯りからそれぞれ灯りがうつされていきます。

ユダヤ教の歴史を振り返るとこの行事は彼らにとってはクリスマスどころではないほどのめでたい日なので大きなセレブレーションが行われている場所があります。ロサンジェルス近郊ではサンタモニカの有名な目抜き通りでハヌカのイベントが行われています。これも12月7日から14日までの8日間です。ユダヤ教の子供達はきっと8日間のホリデーだと羨ましがられるかもしれませんがアメリカの一般社会では学校の授業も会社も普通に営業しています。それどころかこのタイミングに祝うのは少し不安です。Antisemitism=反ユダヤ主義者の存在です。

現在イスラエルとハマスの戦争は激化していますが、イスラエルにはガザ地区同様にエルサレムがあるわけでこの場所をメッカとするイスラエル、大多数がユダヤ教に属する人々、は今国連からガザ地区砲撃について非難されています。海外に点在するユダヤ教徒にとってイスラエルの砲撃はテロへの報復措置とはいえ単にやりすぎだという声はすでに広まっていて世界中大きな摩擦を作り出しています。そんな中で直接関係のないハヌカをお祭りごととして騒ぐのはやはり危険を伴うと懸念している人も大勢います。

Some Jews residing in Los Angeles, California, are struggling to decide how they want to celebrate Hanukkah this year, expressing concern that decorations on their homes may invite reaction from antisemites during the Israel-Hamas war.

Adam Kulbersh, who lives in Studio City, told the LA Times he did not know how to explain to his six-year-old son Jack the plight of Jews in the wake of the ongoing conflict, admitting a menorah could lead to unwanted attention.

“Right now, there are mean people who want to do mean things,” Kulbersh told his son. “My number one job is to keep you safe, and we’re not going to hang decorations.”

上記地元ロサンジェルスのニュースの記事にもありますが、特にユダヤ教を親に持つ子供たちが心配だそうで、ある親は6歳の子供に今の苦境の中でメノラを公然として祝福するのにどうやって説明していいのかわからず、さらにメノラにより不要な注目を集めてしまう恐れがあるのではと懸念しているそうです。他宗教との争い事はどうしてこうも直接関わっていない人間を巻き込んでしまうのでしょうか。宗教との関わりが密接な人ほどこういった不幸を招いてしまう可能性が高いような気がします。とにかく一年に一度くらいこの時期にはそんなもん関係ねえ、みんな酒でも飲んでればそれでいいじゃないかと言ってしまってはいけないのでしょうかねえ。