ここ数週間日本に出張をしていました。日本の顧客を訪問し、まあこれからもよろしくお願いしますといういわゆる Cortersy Visit、表敬訪問が主な理由でした。年に一回くらいこういった機会があるので会う客達にもなんとか覚えられていて話しやすい感じなのですが、そうなってくるとそれなりに込み入ったことに突っ込まれる事にもなり日本とアメリカの文化の違いなのかと感じる出来事があったのでヒトコト言いたくなりました。
アメリカ企業で働いている中で一緒に働いているアメリカ育ちの同僚達の立ち回りを見て感じることがあるのですが、まず彼らの仕事に対する考え方として自分のやるべき事が会社にとって有益になるかということがまず第一に考えられているような気がします。まあこれは日本でもどこでも変わらないのですが、会社にとって金になる事をやり遂げる→ 職場で自分の立場が有利になる → ボスが気にいる → 毎年給料について交渉するパフォーマンスレビューにいい影響を及ぼすという方程式のようなものがいつもどこかにあるような気がします。ある意味いやらしい考えですが給料アップが仕事へのモチベーションとなっているのは大きな事実です。
日本の場合だとボーナスがきっとこれに似ているのかもしれません。セールスポジション、日本の営業職にとってこのモチベーションはきっとあるのでしょうがきっと個人としてではなく営業課というチームでの業績が大きく評価されるのが基本ではないかと思います。会社にとって金になる事をやり遂げる → チームとそのボスに気にいられる → チーム内で自分の立場が有利になる →うまくいけば昇進→結果昇給 という流れでしょうか。お金は後からついてくるという印象があります。多少の本音とたてまえもあるのでしょうが。
もう一つ、アメリカ人の仕事への考え方として、自分のやっている仕事がどれだけ無駄がなく効果的に会社の利益にそって遂行しているかが働く上での大きなキーポイントになると感じます。それをしみじみ感じた瞬間が今回日本の顧客訪問でありました。
客から聞かれていたある見積もり依頼に関して報告をした時ですが、購入する品物はある特定のメーカーしか作っておらずベンダーとなるメーカー側の対応がよくないという事実を述べました。ここで客から、この品物購入の時期の厳守はとても重要なので頻繁にメーカーと協議し早期購入に努めるようにとのコメントがきました。言っている事は理解したのでこちらからも連絡をさらに頻繁にとりなるべく早急に対応すると言っておきましたが、この時頭をよぎったのがこれが逆の立場であったら自分たちの置かれた状況で実際どうゆう対応をするのだろうという事でした。つまりもしも客がアメリカの企業で、自分たちの対応するメーカーが日本であった場合です。メーカーからすればどんな客であれ対応する最低限のマナーが必要なので日本であれば独占している品物を扱っていたとしてもある程度満足のいく対応が望めるような気がします。カスタマーサービスは厳しい要求やカスハラに対応するためのマニュアルがあり彼らが会社のフィルターとなっているのでしょう。なので客から知りたい情報を提供してもあらう必用があると要求されればできる限り対応し、それでも無理な場合は丁寧にすいませんとそこまではっきり言ってもらえればディストリビューターや仲介屋にとってそのやりとりが客への説明になるというものです。客にとってもこれだけやったという状況説明ができれば納得してもらえる可能性があります。全く当たり前のようですが、メーカーにそれだけはっきりいつまでにできるできないを回答させるのに時間と労力を必要とする場合がありますね。例えば見積もりの場合にあとどれだけ時間がいるんだという質問に対して対応しているメーカー側でさえバックログなどではっきり分からない場合どう説明すればいいのかとなると、きっと目安となる次のアップデートの期日を言われじゃあその時にまたとなります。急ぎになればなるほどこの地獄のループの期間は狭まり結局明日には、又は今日中にとなるわけです。こうなると仲介屋としては当然それだけメーカーにコンタクトすることとなり誰もはっきりわからない期日対応だけでかなりの労力を費やします。まさにこういった状況の時、日本とアメリカのメーカーの対応が違うと思うことがあるんですね。客側でもすでに正確なスケジュール入手困難なことはすでに分かっているはずなのですが聞く側の客のポジションからすればそれが彼の仕事なので聞き続けなければいけない。メーカー側からすれば対応する担当の人間が対応するのが彼の仕事なので説明し続けなければいけない。一体この押し問答は本当に意味があるのかと考えてしまいます。たまに客側から聞く表現でいかにも日本らしい聴き方で申し訳ないのですがと言われたことがありますが、このお互い達成感のないような仕事内容に対応しようとする日本の企業はある意味とても真面目なんだと感じますが一方ではいつでも真摯に客に対応することが正しい事だと当たり前に感じてしまっている事も日本では仕事を回す上で悪循環になっているのではと思ってしまいます。結局どこまでサービスをしても慣れてしまえば物足りなくなるわけでそれに対応するための費用はかかるばかりになってしまいます。そうなった時、アメリカ企業では対応費用という理由で元の品物の価格をあげるでしょう。これだけあなた達に対応してきたので次回はその分の時間と労力を見積もりに入れますよとなります。これも自分の経験ですが自分はお得意先だとかこれまでいい関係なんだからとかそんなことしないでという頼み事は通常アメリカのビジネスではしないのが普通のようです。どちらかと言えば客となる自分達が必要以上に質問を投げてしまったその結果であり、自分達のアプローチに問題があったと考えるのが普通ではないかと思います。言い方を変えればアメリカでは客とベンダーの間にある距離はいつも一定に保っておいた方がスムーズなビジネスができると考えられるようです。日本では客に寄り添った対応が通常のビジネスモデルのように感じます。なのでベンダーではそれに対応するためのガバナンスが整っているのでしょう。それでもいいのかもしませんがそれを当たり前とする日本企業がもし客という立場の場合だと、ただちょっと正しいスケジュールが聞きたいだけ、購入前に少し確認したいだけなので何もそれほどのことは聞いていないので悪くはないだろうと考えてしまいがちのように思えますが、結果それは自分達が追加で払わなければいけない費用として返ってくる可能性が十分あることを理解してもらう必用があるのかなあと感じます。もちろん競合に行くからもういいというのであればそれまでですが、アメリカ国内では大体皆同じ対応だと思うのでやはり結果は同じになってしまう気がします。
上記に述べましたが、一般的にアメリカ人の働き方の考えとして無駄な動きをして時間や費用を費やすことを日本人と比べて特に嫌う傾向にあるような気がします。そのくらいまあいいですよとか、ちょっとお願いのような依頼は通用しないケースが多いようです。品物受注が仕事依頼であれば自分達が無駄なく最短で購入・出荷でき、尚且つそれが次回リピートオーダーのスタンダードとなれば成功と言えるのでしょう。まあそれもどの国の企業も同じでしょうが、受注している仕事を円滑に進めるために客のために今回は多少流れをかえてもいいじゃないかと考えると親切心はあるものの仕事内容にムラが出てきてしまう事もありますね。そんな風潮が日本企業は多いような感じがします。個人的にはいいじゃないかと思います。幸いまだAIが統一してる世界ではないので人間が回してるんだからしょうがないと。むしろそんな中で社外との人間関係も育っていくのではないかとさえ感じます。
決してどちらの国のビジネスの体制がいいというのではなく、ただそれぞれ違う文化を背負って商売しているだけの事ですが国を隔ててのビジネスにはそれぞれ文化の理解があってこそ初めてお互い有益な関係が結べるのではと今回日本企業訪問中にホゲーと考えてしまい、自分の書いた議事録が疎かになっていたようです。